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日頃のつながりが、災害時に活きるー「災害時の連携を考える長野フォーラム」を開催
2021.03.30
日頃のつながりが、災害時に活きるー「災害時の連携を考える長野フォーラム」を開催
長野県災害時支援ネットワーク

<構成団体>
長野県NPOセンター 長野県社会福祉協議会 長野県生活協同組合連合会 連合長野 長野県共募 青年会議所長野ブロック 長野県長寿社会開発センター 長野県弁護士会
2021年1月29日、令和元年東日本台風の経験を振り返る「災害時の連携を考える長野フォーラム」がオンラインで開催されました。主催は、「長野県災害時支援ネットワーク」(以下は通称の「Nネット」と記載)。長野市内からオンラインで配信し、全国で約300名が視聴しました。

前半は「災害支援ネットワークとの連携の視点で活動を振り返る報告」のリレートークが5名。後半は「災害の最前線での連携や全体を俯瞰しての報告」が5名。全10名の報告概要を含め、フォーラム全体を通して感じられた「あって良かった!Nネット」との思いなどを紹介します。

写真: ZOOMで開かれたフォーラムの参加者たち(一部)
災害への備えから生まれたNネット
地震や台風、長雨など毎年のように各地で起きる自然災害。頻発する自然災害に備えて、企業や団体、行政、NPOなどの協働を考える必要を多くの人が抱えていました。「協働した災害支援を考える場をつくろう」と呼びかけたのは2017年。企画会議を開き、翌年にはメンバーを拡大した「ネットワーク会議」を開催するようになりました。
堅苦しさを取り除いた会議は、出欠が自由で、遅刻もOK。依頼文や旅費はなく、余計な事務手続きもなし。何を言ってもいいが、全員が積極的に発言するという感じだったそうです。
災害への備えから生まれたNネット
災害に備えた平時からの連携
Nネットの目的は、「団体や組織の枠を超えて、平時から課題や取り組みを共有し、長野県内で災害が起きたとき、多様な団体や行政が効果的に連携し、被災者支援を円滑に行う」こと。ゆるやかにつながりながら、2018年1月に第1回「災害時の連携を考える長野フォーラム」を開き、10月には災害時を想定した図上訓練を実施。翌年3月に第2回フォーラム、6月からは毎月、災害支援団体・個人の活動交流の場「つながるBOOK」を開催してきました。そして、2019年10月、台風19号がやってきました。 
災害に備えた平時からの連携
リレートーク前半:活動を振り返る報告
日本労働組合総連合会長野県連合会の岩崎恵子さんは、「日常的に顔の見えるNネットの関係ができていたから、『できたこと』があった」と話し、「情報共有会議でいち早く情報を得ることができた」、「困った時に『あの人』の顔が浮かんだ」と、普段のゆるやかなNネットのつながりが、災害支援の場で活きた経験を報告しました。

長野県生活協同組合連合会の中谷隆秀さんは、「もし長野で災害が起きたら」を心配して、ネットワークづくりを呼び掛けた一人です。発災後は、現場の情報を集め課題を整理して対応するために、情報共有会議(第1回は10月14日、年明け2月29日までに計23回)をを開きました。参加は、のべ258団体・1,230人に及んだそうです。
リレートーク前半:活動を振り返る報告
長野県長寿社会開発センターの戸田千登美さんは、上司から「うちが災害に関係があるのか?」と聞かれ、「関係のある・なしではなく、関係をつくるんだ!」と答え、自発的な取り組みで、ボランティアのバス配車や支援物資の仕分け、写真洗浄、手ぬぐい雑巾の作成など、シニアが参加できる支援ツールが増えたそうです。

日本青年会議所北陸信越地区長野ブロック協議会の野村和正さんは、長野県で地域ごとにある17の青年会議所が災害協定を結んで、「何かあれば助けに行く!」体制を紹介しました。日頃から、人の持つ能力や役割、規模などを知っておくことで、効果的で効率の良い取り組みができた経験を話しました。

長野県弁護士会の山岸重幸さんは、はじめて参加した情報共有会議で、1日の作業を終え集まってきたボランティアたちの迫力に圧倒され、「こんな場違いのところで法律が何の役に立つのかと思っていた」とのアウェー感を紹介。まず顔を覚えてもらい、そのうちに声を掛けてもらい、現場の困りごとを相談されたという経験を話しました。
リレートーク後半:全体を俯瞰する視点での報告
長野県NPOセンターの山室秀俊さんは、5年ほど前から行ってきたフォーラムやワークショップなどを通じて「汗をかきあう信頼関係」と「幅広なコミュニケーション」ができていたと話し、災害支援の現場で「命」とも言える情報を提供・交流してきた情報共有会議が果たした役割を高く評価しました。

長野県社会福祉協議会の山﨑博之さんは、ボランティアの三原則を、被災者本位・地元主体・協働と紹介し、「信頼できる顔の見える関係が復興の歩みを支えてきた。Nネットがあって本当に良かった」と、支援現場の最前線に関わり続けてきた経験を振り返りました。

写真: Nネットの代表幹事を務める山室秀俊さん(長野県NPOセンター事務局長)が、フォーラムの趣旨とNネットの取組を紹介しました。
リレートーク後半:全体を俯瞰する視点での報告
長野県危機管理防災課の古越武彦さんは、行政の役割を「エンジンオイルのようなもの」と例えました。行政は仕組みや形を作れても、魂を入れることが苦手。環境がどんどん変化する中で、柔軟な対応ができたのは「Nネットの力だった」と評価しました。

長野県社会福祉協議会まちづくりボランティアセンターの福澤信輔さんは、現場の声に応えて実現させた「信州農業復興再生ボランティアプロジェクト(通称:農ボラ)」の経緯と取組を紹介しました。「できるのか」との不安を払しょくしたのは、多様な連携で「できます」と答えたNネットの持つ信頼感だったそうです。

長野県共同募金会の塩澤宏之さんは、県の助成金と個人・企業からの寄付などでつくった「ONE NAGANO基金」を、Nネットが全力で走りながら試行錯誤してきた官民連携の新しい仕組みと評価しました。
ゆるやかなつながりが活きた災害支援
10名のリレートークで共通して感じられたのは、「つながりがあって良かった」との思いでした。普段からゆるやかにつながって、互いにどんな人か、なにができるのかを知り合っていたNネットが、「いざという時にとても役に立った」と言います。「あの人に頼めば、相談すれば、できるんじゃないか」という信頼感があったようです。

全国から駆け付けてくれた8万人を超えるボランティア(農ボラを含めた概数)を受け入れて円滑に作業を進められたのも、現場の困りごとやニーズに寄り添ってきめ細かに対応できたのも「ネットワークの力だった」といった報告もありました。
被災地の復興には長い年月がかかります。関心を持ち続け、つながり続けることが、被災者を支え、復興を助ける力になります。「関係あるのか?」ではなく、関係はつくるもの。「役に立つのか?」と考える必要はなく、いつかどこかで必要とされる時がくること。「あの時」ではなく、「これからも」支援の力が必要なこと。

ゆるやかなつながりが、いざという時の頼りになることをNネットが教えてくれました。

新型コロナウイルスの影響で、地域外から災害ボランティアを受け入れることが難しくなっています。外部の支援に頼ることができない以上、身近なつながりが大事になります。他人事ではなく自分事として地域に関わって、互いの顔が見え知恵と汗を出し合える関係を築くことが必要です。

写真: フォーラムを記録したグラフィックレコーディング
<長野県災害時支援ネットワーク(通称「Nネット」)の構成団体>

長野県生活協同組合連合会、日本青年会議所北陸信越地区長野ブロック協議会、 
長野県長寿社会開発センター、長野県共同募金会、日本労働組合総連合会長野県連合会、
長野県弁護士会、長野県社会福祉協議会、長野県NPOセンター

長野県災害時支援ネットワークhttps://nagano-saigaishien.net/ 

右写真:フォーラムの運営者とリレートークの報告者たち

取材・写真・文章 : 吉田 百助 (ナガクルソーシャルライター) 編集・校正 : 寺澤 順子(ナガクル編集デスク) 取材協力:長野県災害時支援ネットワーク