「まだ」終わってない

復興へのアクション復興へのアクション
新たなご縁とともに、地域を支える車屋さん。
2021.09.01
新たなご縁とともに、地域を支える車屋さん。
取材・文章:藤田沙也、藤井絵莉子(長野県立大学ボランティアサークルSkip )
Skip Instagram(https://www.instagram.com/skipskipskip311/?hl=ja)
長野県立大学ボランティアサークル「skip」が長野あっぷるかープロジェクトの拠点となった「有限会社RISE」代表の佐藤さんにお話を伺いました。
長野あっぷるかープロジェクトとは、台風19号の被害を受けた方に向けて、車を提供するプロジェクト。自身も被災者でありながら、被災者を支援するこの活動は、被災時に出会った沢山の人々とのご縁が無ければ生まれなかったそうです。現在も被災前と同じ場所で車の販売をしながらも、地域の方々に車を無償で提供をするなど地域への支援を続けています。ですが、被災当時では今のような未来は想像出来ませんでした。
「すべて水に飲み込まれた。もう無理かもしれないと思った。」被災の状況
災害以前から長野市穂保地区のアップルラインで車の販売店「有限会社RISE」を営んでいた佐藤さん。ところが、台風19号により千曲川が決壊し、敷地内には泥やごみが流れ込み、会社再開が困難な状況となりました。
支援は個人住宅が優先されていたため、事業者は各自で復旧を行わなければいけない状況でした。そのため、自分達だけで流れてきた泥やごみを片付ける作業をする必要がありました。その中で、自分達だけで復旧ができない個人店はどうすることもできず、再開を諦めるお店も少なくなかったそうです。佐藤さんもその中の一人でした。
「ここをそのままにして違うところでやったほうがお金もかからないし、災害が起こらない場所に行った方が、俺も手っ取り早かったもん。」

敷地内に泥が流れ込んだ様子。販売用の車の中にまで重たい泥がぎっしり入り込んでいました。
「すべて水に飲み込まれた。もう無理かもしれないと思った。」被災の状況
事務所裏のガレージの様子。車を整備する機器なども水に浸かってしまいました。
お店の再開を諦めかけたとき、いつの間にか広がっていた支援の輪
災害直後、以前からお店を利用していたお客さんが真っ先に支援に駆けつけてくれました。そのお客さんの知り合いにたまたまご縁がつながり、さらに手伝いに来てくれる人が増えていったそうです。
そのうちの一人として、「NPO法人絆Japan」の代表である笠原正好さんが支援に来てくれました。ボランティアなどを中心に車や倉庫の片づけの作業をしてくれる人を集め、泥だしの作業をするための高圧洗浄機等の機材手配など、必要な支援を手際よく進めてくださったそうです。
その後も全国的に被災地支援活動をする団体「幡ヶ谷再生大学 復興再生部」の方々や長野・上田地域の学生が有志で車の洗浄のお手伝いをするなど、次々と佐藤さんのお店を訪れる人が現れ、復旧作業を手伝ってくれました。

そんな沢山の人との出会いがあり、お客さんからも「ここでやろうよ」という声をかけてもらったそうです。一度は会社を畳もうと考えていた中で、それがお店を再開するきっかけとなったと佐藤さんは話してくれました。
この場所でお店を再開すると決めた佐藤さんを支えようと、お客さんの中からお店再開資金を集めるためのクラウドファンディングの話が生まれました。それがのちに佐藤さんの息子さんが企画した「長野あっぷるかープロジェクト」に繋がりました。
お店の再開を諦めかけたとき、いつの間にか広がっていた支援の輪
復興が進んでもふらっと立ち寄れる身近な存在に。
「手伝ってくれる人がいなかったらどうなっていたんだろうな。2~3年かかっていたかもしれない。大きな営業所でなければ、人を集めてくることは難しい。繋がりがなくて復旧ができなかった個人や家族経営の営業所もたくさんあった中で、ボランティアに来てもらえたのは恵まれていた。業者に頼んでいたら、何百万もお金がかかってしまったはずだし、潰れてしまったかもしれない。お客さんのつてに知り合いを紹介してもらったことで輪が広がっていった。ご縁を感じた。だから、震災前よりも沢山の繋がりがある今の方がずっと楽しい」
被災する前はこれほどまで人とのつながりはなかったという佐藤さん。
「繋がりはできたが、特別なことをやろうという気はしない。それでも、ふらっと来たときにおしゃべりする中で、人を繋げられる。困っている人には軽トラを貸してあげたり、知り合いを紹介したり。それがその人の助けになっていれば嬉しい。」
被災したことによって出会った沢山の人々、その人々の温かさに触れたことで、このご縁を活かし、人を繋げられる存在でありたいと話してくれました。

復興に携わったたくさんの人々が気軽に戻ってこられる居場所となることで、これまでのご縁を大切にしながら、つながりが広がっていく。そんな拠点のような役割を佐藤さんが担っていると感じました。
長野県立大学ボランティアサークル「skip」
台風19号災害後、豊野地区でわかめうどんの炊き出しを行った際の様子。Skipを卒業したOB・OGメンバーも駆けつけ、ボランティア活動を行った。